第2回日本胎児治療研究会
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11月27日(土)12:00〜13:00 |
ランチオンセミナ |
座長 竹内久彌 順天堂大学名誉教授 |
Differential THI - さらなる Noise reduction を求めて- |
名取道也 国立成育医療センター副院長 |
当センターでの胎児水腫・胎児胸水の治療経験 |
三谷龍史、末原則幸、窪田昭男、北島博之、竹内 真、中山雅弘 大阪府立母子保健総合医療センター 1987年から2002年の間に大阪府立母子保健総合医療センター産科で経験した胎児水腫は194例あった。うち、出生したのは92、死産は101件であった。妊娠24週以後の症例は137件あった。妊娠24週以後の死産率は32.1%、生存率は67.4%であった。胎児胸水は22例あった。死産は2例、出生後死亡は6例あった。死産に至ったのは、18トリソミーの1例と、原因不明の胎児水腫1例であった。死亡例は、心奇形をともなったもの、染色体異常2例であった。胸腔-羊水腔シャント術は肺分画症2例に行われ、良好な予後がえられた。 胎児、胸水に対しては、まず胸水を穿刺し、胸水の性状を確認すると共に、肺の拡張度を確認し、肺が充分拡張し、かつ、児の未熟性が高い週数では、持続的胸水ドレーナージを試みる。肺分画やCCAMLなどでは胸腔-羊水腔シャント術は有用であると思われる。 |
胎児水腫の胎内評価と出生後の臨床像および生命予後 |
与田仁志 日本赤十字社医療センター 【目的】日赤医療センターにて10年間に経験した胎児水腫について胎内診断の内容、合併症、生命予後などについて検討した。【対象と結果】胎児水腫は48例で原因も腫瘍性疾患や先天性心疾患をはじめ多岐にわたった。院内出生例の68%が母体搬送ないしは紹介例で、産科管理期間は平均16.8日であった。羊水過多は30例、羊水過少は3例に合併した。羊水穿刺を含む胎児治療は12例に施行されうち3例はカテーテル治療であった。平均在胎週数は32.8週、出生体重は2424gで、Apgarは4.2点であった。胎児水腫の原因は(1)双胎間輸血症候群TTTS 12例、(2)先天性乳靡胸水(リンパ胸水)11例、(3)胎児貧血5例、(4)先天性乳靡腹水(リンパ腹水)4例、(5)骨系統疾患4例、(6)腫瘍3例、(7)先天性心疾患2例、(8)先天性感染症2例、(9)胎便性腹膜炎2例などで、(10)原因不明は3例であった。死亡例は17例(35.4%)で、疾患別では骨系統疾患や先天性感染、肺低形成を伴う大量胎児胸水の死亡率が特に高かった。 |
胎児胸水症例における原因別に見た胎児治療の効果ならびに児の予後 |
藤田恭之、中並尚幸、月森清巳、穴見 愛、内村美生、佐藤昌司、中野仁雄 九州大学 九州大学病院周産母子センターで妊娠分娩管理を行った単胎胎児胸水例18例(1999〜2003年)について、胎児胸水の原因、胎児治療の有無、予後の関連を検討した。胎児胸水の原因は18例中11例が乳び胸、2例が心原性、5例が特発性であった。乳び胸11例中8例に対し胸水除去を行い、2例は子宮内で胸水の貯留量が減少し、残りの6例では再貯留を認めた。胸腔穿刺を行わなかった3例も含め、11例全例が生児を得ることができた。乳び胸の胎児胸水は胎児治療ならびに治療効果の有無に関わらず、児の生命予後は良好であった。心原性の2例に対し経胎盤的ジギタリス投与を、また特発性の5例中2例に対し胸腔穿刺、胎児輸血、アルブミン投与を施行したがいずれも治療効果はなく、両群とも胎児治療の有無に関わらず児の予後は不良であった。以上の結果から、胎児胸水症例の予後規定因子としては、胎児治療の有無よりもむしろその病態が重要であることが示唆された。 |
心疾患に起因する胎児水腫:胎児治療と周産期管理 |
前野泰樹、廣瀬彰子、神戸太郎、藤野 浩、林 龍之介、堀 大蔵、嘉村敏治、松石豊次郎 久留米大学 目的:心疾患に起因する胎児水腫症例における胎児治療を含めた周産期管理の方法について検討した。 方法:胎児不整脈に起因する胎児水腫12例(先天性心奇形の合併3例)と心奇形などによる一次的な心疾患に起因する胎児水腫の10症例、計22例について、胎児治療を含めた周産期管理と有効性について後方視的調査した。 結果:胎児不整脈12例中、徐脈6例、頻脈5例、脈の不整1例。胎児治療の脈の正常化が有効例は頻脈の5例中5例で徐脈に2例では無効。一次的な心疾患10例では、先天性心奇形8例、心筋疾患2例。胎児治療は4例にdigoxinを投与し2例で胎児水腫が改善した。一方、早期娩出による後負荷の軽減は、TRの1例で有効であったが、他の病態では無効であった。 結語:心疾患による胎児水腫では、前負荷・後負荷の軽減、不整脈・心機能低下の改善の4つの病態を考慮しながら胎児治療・周産期管理の戦略を立てること重要である。 |
11月26日(金)15:00〜17:00 |
シンポジウム 胎児水腫 胎児腔水症の治療 Part 2 |
胸腔羊水腔シャント術の胎児循環動態への影響および胎児・新生児予後 |
宮下 進、日高庸博、遠藤紫穂、山中 薫、川俣和弥、石原由紀、根木玲子、千葉喜英 国保旭中央病院、国立循環器病センター 胎児胸水症13例を対象とし、のべ17回の胸腔羊水腔シャント術を施行した。 胸腔穿刺時またはシャント術直前に胸腔内圧と羊水腔圧を測定した。 胎児心、肺、胸郭の計測および血流計測を術前後に行った。 胸腔内圧の上昇を全例に認めた。術直後に緊急帝王切開を施行した2例を除く15回のシャント術後に胸水は全例で減少し、浮腫は8/13例(62%)で改善した。Pre-load indexは13/15例(87%)で低下し、 下行大動脈最大速度 は13/14例(93%)で上昇した。 11例中4例にシャント不全を認めた。出生が33週以降の児の83%(5/6)が生存したが、33週未満の児の生存率は14%(1/7)と不良だった。死亡4/7例に肺低形成を認めた。 シャント術は胸水ドレナージ効果に加えて 胎児循環動態を改善させる。シャント術後の新生児予後には現状では出生週数が主として影響する。 |
胎児胸水対する胸腔羊水腔シャント術による治療成績 |
上山明美、馬場一憲、岩田 睦、木下二宣、林 隆、村山敬彦、斉藤正博、小林浩一、竹田 省 埼玉医科大学 当総合周産期母子医療センターにおいて、2003年3月〜2004年2月までの1年間に経験した胎児胸水症例8例につき、臨床経過、治療成績などを検討した。 胎児胸水発見時期は、妊娠21週〜37週であり、両側性の胸水症例は7例、片側性の症例は1例であった。両側性の7例に胎児腹水を、6例に全身浮腫を伴っていた。胸水の原因は、2例は腫瘍によるもの、他の6例は乳び胸水と考えられた。7例に対して、妊娠22週〜37週にダブルバスケットカテーテルによる胸腔羊水腔シャント術を施行した。腫瘍性の2例はシャント術後、各々9週、3週後に出生し、出生後に腫瘍摘出手術を行い予後良好であった。乳び胸水の6例のうち、4例は予後良好、2例は胸水が改善しないまま出生し新生児時期に死亡した。 胎児胸水に対する胸腔羊水腔シャント術は有効な治療手段と考えられた。 |
胎児胸水における胸水羊水腔シャントの有用性- 胎内治療前後の胎児肺及び循環動態の変化に着目して - |
米本寿志、伊藤 茂、木下勝之 順天堂大学 リンパ系の障害を主な原因とする原発性胎児胸水の頻度は12000妊娠に1例とされ稀な疾患である。しかし、妊娠32週以前の発症や胎児水腫が進行した例では致死率は40%と予後不良であるため肺低形成及び循環動態の改善を目的とした胸水羊水腔シャントの適応となることが報告されてきている。今回我々は胸水羊水腔シャント術を行った胎児乳び胸水の術前後の胎児肺及び循環動態の変化を評価しその有用性について検討した。 1996から2004年の9年間当院で管理した胎児胸水9例のうち、1) 妊娠32週以前に発症し2) 胸水穿刺により性状がリンパ球優位でかつ3) 心奇形など他の合併症を認めないことから胸水羊水腔シャント術を行った5例を対象とし、術前後における肺・胸郭比 (L/T比)、腹部皮下浮腫、下降大動脈血流速度 (Vmax)及び下大静脈血流波形 (PLI)の変化を比較した。なおデータはmean±SEMで表し、統計学的検討にはStudent Ttestを用いてP<0.05を有意差ありとした。 L/T比は術前後で有意に増加した(術前: 0.22±0.007 術後1日: 0.26±0.009、 P<0.05)。また皮下浮腫は術前後で有意に減少し(術前: 15.3±1.7mm 術後1日: 9.0±0.55 mm、 P<0.05)、さらにPLIも有意に減少した (術前: 0.49±0.03 術後0.34±0.03、 P<0.05)。一方Vmaxは術前後で有意な変化を認めなかった(術前: 101.5±5.1cm/s術後: 107.6±4.3cm/s P=0.49)。 胸水羊水腔シャントは胎児肺低形成及び循環動態の改善を図るための有用な胎内治療の一つであることが示され、今後大いに期待がもたれる。 |
胎児期に大量の胸水貯留を伴った肺分画症の静脈壁肥厚について |
北野良博、本名敏郎、黒田達夫、森川信行、渕本康史、寺脇 幹、田中圭一郎、川島憲子、町頭成朗、松岡健太郎、林 聡、左合治彦 国立成育医療センター 肺葉外肺分画症(以下、本症)はときに大量の胸水貯留・胎児水腫の原因となることがあるが、その機序は明らかではない。胎児期に大量の胸水貯留をきたし胸腔羊水腔シャントを要した本症3例の静脈壁を観察し、興味深い所見を認めたので報告する。各症例それぞれ約40個の静脈について、外径、中膜厚、外膜厚を測定し、横隔膜ヘルニア手術時に偶然発見され摘出した本症症例(胸水産生なし)を対象として比較した。中膜と外膜の外径に対する比(%中膜厚と%外膜厚)は、胸水貯留例でそれぞれ7.0±1.9%(mean ±SD)、9.5±3.8%で、対象の2.3±0.7%、3.1±1.3%と比較して有意に高値であった。胸水貯留例の静脈では中膜と外膜がともに肥厚しており、静脈系の圧が高いことが胸水貯留をきたす原因である可能性が示唆された。 |
双胎間輸血症候群における胎児水腫(stage IV)の胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術による治療成績 |
村越 毅 1)、松本美奈子 1)、林 聡
2)、左合治彦 2)、中田雅彦
3) |
ウィルス性胎児水腫における高力価γグロブリン胎児腹腔内投与の有効性 |
松田秀雄 防衛医科大学校 ウィルス性の胎児水腫の体内治療はこれまで胎児輸血を中心とする治療が行われてきた。一方、より根治的な方法としてγグロブリンや、抗ウィルス剤の使用が提唱されている。しかしながら、それら薬剤の経母体的投与の不確実性と胎児直接投与の危険性から、現在のところ安全な投与法が医学的証拠として確立しているわけではない。 前回本研究会で、症候性サイトメガロウィルス感染胎児に対するγグロブリン腹腔内投与の成功例について報告した(BJOG.04;111:756-7)。今回、パルボウィルスによる胎児水腫症例に対し、「説明と選択」を得て抗パルボウィルス抗体高力価γグロブリン腹腔内投与を施行した。臨床所見と胎児腹腔内ウィルスDNAコピー数の変化から、著効したと考えられた。 胎児ウィルス血症を速やかに改善する根治的な方法として、胎児腹腔内γグロブリン投与は良法と考える。従来の治療法と比較してもより簡便で安全性が高いと考えらるので、まず考慮すべき方法として推奨しうると思われた。 |
11月27日(土)8:30〜9:00 | ||||
口演1 胎児治療 貧血・心不全1 | ||||
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胎児水腫における肺低形成の評価に肺動脈径が有用か? | ||||
川滝元良、豊島勝昭 神奈川県立こども医療センター 目的:胎児乳び胸において肺低形成の程度は予後に大きな影響を与える。胎児治療の目的の第一は肺低形成の予防である。しかし、胎児期に肺低形成の正確な評価は困難であり、未だ確立されていない。我々は、肺動脈径から肺低形成の評価を行ったので報告する。 対象:胎児乳び胸15例で、胎児心エコーで肺動脈径を測定し、その後剖検または臨床経過から肺低形成を判定できた症例である。右肺動脈径(RPA)、左肺動脈径(LPA)下行大動脈径(DAO)在胎週数(GA)より、RPA+LPA/DAO、RPA+LPA/GAを算定した。 結果: 肺低形成(+) 肺低形成(ム) RPA+LPA/DAO 1.14〜1.21 1.18〜1.67 RPA+LPA/GA 0.09〜0.18 0.19〜0.25 Cut offポイントをRPA+LPA/DAO=1.20 RPA+LPA/GA=0.18とするとRPA+LPA/DAOのsencitivity、 specificityは67%.80% RPA+LPA/GA sencitivity、 specificityは100%、100%であった。 結語:胎児肺動脈径による評価は有用である。 |
臍帯血ナトリウム利尿ペプチドを用いた胎児心不全の重症度評価 | ||||
豊島勝昭、川滝元良、猪谷泰史 神奈川県立こども医療センター 【目的】心不全の内分泌学的マーカーであるナトリウム利尿ペプチドを用いて胎児心臓病や胎児水腫の心機能を検討する。 【方法】胎児心臓病86例(解剖学的異常68例、不整脈12例、TTTS受血児8例)と先天性乳糜胸に伴う胎児水腫7例を対象とした。分娩時に臍帯血hANP・BNPを測定し、胎児心エコー所見と生後の経過を後方視的に検討した。 【結果】hANP、BNPの値と生後に心不全治療を要する頻度は相関した。胎児治療を示唆されている不整脈発作、左心低形成、右心低形成、TTTS受血児などでは高値例は多かったが、上昇の軽い症例もあった。心原性胎児水腫の2例はANP/BNPが10000以上の異常高値を示したが、乳糜胸の胎児水腫ではANP/BNP上昇は7例中の2例のみであった。 【結論】臍帯血hANP/BNPは胎児心不全の重症度評価、胎児水腫の鑑別、胎児治療の適応や効果判定に役立つ指標になる可能性がある。 |
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酢酸フレカイニドの投与が奏効した胎児上室性頻拍の一症例 |
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塩崎隆也、吉田 純、村林奈緒、日下秀人、杉山 隆 三重大学 胎児頻拍の治療法として抗不整脈薬の経母体的投与が有用である。フレカイニドの投与が奏効した胎児上室性頻拍の症例を経験したので報告する。 症例は25歳、1回経産婦。妊娠23週、胎児頻脈のため当院に紹介された。胎児心拍数は220-230/分であり、dual M mode心エコーで心房と心室の拍動は同期しており、胎児上室性頻拍と診断した。本頻脈は持続性であり、フレカイニド200mg/日の投与を開始したが、不整脈を認めたため100mg/日に減量した。その後胎児心拍数は130/分程度に安定し、外来において管理し39週時に正常分娩となった。分娩直前における本剤の母体血中濃度は217ng/ml、臍帯静脈血中濃度は153ng/mlであった。出生後、児には予防的抗不整脈薬を投与せずに経過良好であった。 フレカイニドによる胎児頻拍の治療法として、一般に200-400mg/日の母体投与が知られているが、胎児不整脈の生じる可能性があり、個々の症例に応じて投与方法を考慮すべきである。 |
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11月27日(土)9:00〜9:40 | ||||
口演2 胎児治療 貧血・心不全2 | ||||
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症候性パルボウィルス感染胎児に対する特定ウィルス抗体高力価γグロブリン胎児腹腔内投与(γglobulin injection into fetal peritoneal cavity:GIFP)の有用性 | ||||
坂口健一郎、松田秀雄、芝崎智子、高橋宏典、早田英二郎、古谷健一、菊池義公 防衛医科大学校 【目的】ウィルス性胎児水腫の体内治療はこれまで主に胎児輸血が施行されてきた。今回、症候性パルボウィルス(B19)感染胎児に対するGIFP施行した。ウィルス性胎児水腫における特定ウィルス抗体高力価γグロブリン胎児腹腔内投与(GIFP)の有効性について報告する。 【症例】37歳1経産、妊娠19週、胎児水腫を指摘され紹介受診。入院時(20週1日)、母体血B19-IgM(EIA) 11.54と陽性。羊水B19-DNAは5.7×106 copy/mlであった。胎児中大脳動脈最大流速(MCV-PSV)0.62m/sと亢進。腹水、心嚢液貯留、心肥大を認め、症候性感染胎児と診断した。「説明と選択」妊娠20、21週で抗B19-GIFPを行った。23週で胎児水腫は消失し順調に経過した。38週、反復帝王切開施行。2308g男児Apgar Score8/10。新生児血中B19-DNA(-)であった。児は2ヶ月を経て健常である。 【結論】胎児ウィルス血症を速やかに改善する根治的な方法として、GIFPは良法と考える。従来の治療法と比較して、より簡便で安全性が高く、まず考慮すべき方法として推奨しうると思われた。 |
ヒトパルボウィルスB19による胎児貧血に対し胎児輸血が著効した1例 | ||||
太田篤之、米本寿志、伊藤 茂、中村 靖、木下勝之 順天堂大学 パルボウィルスB19の胎児感染による胎児貧血と診断し、輸血を行い健児を得られた症例を経験したので報告する。症例は26歳、24週に胸腹水の貯留が認められるため紹介となった。超音波上、著明な腹水、心嚢液貯留及び著明な肝腫大を認め、りんご病の患児と接触があったことから母体血液よりパルボウィルスB19IgM、IgGの測定を行い陽性の結果が得られたためパルボウィルスB19感染による胎児貧血が考えられた。25週臍帯穿刺を行い、Hb6.1g/dl、Ht18%と高度の貧血を認めたため26週濃縮洗浄赤血球を腹腔内及び臍帯内に各々50、16ml輸血した。輸血直後よりHb8.9g/dl、Ht28.3%と推移した。腹水、心嚢液は著明に減少したため外来で経過観察とし39週母体適応のため帝王切開術を行い3357gの女児を娩出した。パルボウィルス感染による胎児貧血に対し胎児輸血が著効することが示唆された。 |
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胎児輸血を行ったJra抗体による免疫性胎児水腫の例 | ||||
石原由紀、日高庸博、遠藤紫穂、山中 薫、川俣和弥、根木玲子、千葉喜英 国立循環器病センター 日本では免疫性胎児水腫は減ってきているが、母体からのJra移行抗体による胎児水腫を4回の胎児輸血によって胎内治療した。 症例は40歳、3経妊3経産。妊娠28週に胎児胸腹水と心嚢液貯留、羊水過多を認めたが、胎児不整脈や心構築異常、胎児奇形なし。羊水染色体検査は46XX、ウィルス感染も否定。母体はAB型Rh陽性であったがJra不規則性赤血球抗体陽性であったため、免疫性胎児水腫と診断した。妊娠30週に胎児採血を行いHb3.3g/dl、 Ht 10.6%と重度の貧血を認め、胎児輸血を経臍帯で4回くりかえし行った。生後2回の輸血後は貧血は進行せず、新生児黄疸も発症しなかった。 従来Jra抗体は胎児、新生児溶血性疾患はおこってもごく軽症であるとされているが、今回はその他の原因が否定されたため、胎児水腫の原因と考えた。この場合の管理方法としては、胎児の成熟を待つ間、胎児輸血による貧血治療が必要である。 |
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胎児cystic hygromaに対するOK-432局注療法の検討 | ||||
遠藤紫穂、日高庸博、山中薫、川俣和弥、石原由紀、根木玲子、千葉喜英 国立循環器病センター 小児外科領域においてcystic hygromaに対するOK-432局注療法は手術療法とならんで有効性の高い治療として既に確立している。今回我々は当院でOK-432局注療法を施行した胎児cystic hygroma3症例について検討したので報告する。 各症例についてはそれぞれ治療施行前に嚢胞穿刺液細胞診で多数の成熟リンパ球を確認した。治療方法はOK-432を生理食塩水で10倍に希釈して0.1KE/mlに調整し、嚢胞内容液を吸引して同量のOK-432溶液を注入した。治療時期は22週から30週で各症例につき2〜3回施行した。 結果は完全有効が1例、部分有効が1例、子宮内胎児死亡が1例であった。子宮内胎児死亡例は胎児水腫合併例であった。治療後に母体発熱・炎症反応や破水はみられなかった。 今後症例を重ね、治療適応や薬剤使用量についてさらに検討を要すると思われた。 |
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11月27日(土)10:50〜11:50 | ||||
口演3 TTTS治療 | ||||
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本邦における双胎間輸血症候群に対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術の現状と治療成績 | ||||
中田雅彦 1)、日下恵美子 1)、三輪一知郎
1)、住江正大 1)、佐世正勝
1)、杉野法広 1)、村越 毅
2)、林 聡 3)、左合治彦
3)、石井桂介 4) 山口大学 1)、聖隷浜松病院 2)、国立成育医療センター 3)、新潟大学 4) 【目的】TTTSに対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)の有効性について検討した。【方法】2002年7月から2004年8月の期間にFLPを施行した34例を対象に治療成績を検討した。 【成績】Stage IIが4例(12%)、IIIが21例(62%)、IVが9例(26%)だった。術後7日以内に2例(6%)、28日以内に6例(18%)が破水し、術後7日以内に6%が流早産に至った。分娩に至った30例の分娩週数(中央値)は30.3週で、術後10.1週の妊娠継続が可能だった。2児生存は17例(57%)、 1児以上生存は26例(87%)だった。新生児死亡例が2例(3%)、 PVLを2例(3%)に認めた。生存児43例中41例(95%)に神経学的所見を認めなかった。 【結論】FLP後の児生存率は高く、神経学的異常も少なかった。 TTTSに対するFLPは有効な治療法である |
一絨毛膜性品胎に発生した胎児間輸血症候群に対する胎児鏡下レーザー凝固術の経験(Feto-fetal hemorrhageを合併した1例) | ||||
石井桂介 1)、沼田雅裕 1)、菊池 朗
1)、田村正毅 1)、高桑好一
1)、田中憲一 1)、村越 毅
2) 新潟大学 1)、聖隷浜松病院 2) [症例]妊娠19週の一絨毛膜性三羊膜性品胎症例で、第1児が羊水過多、第2児が羊水過少と臍帯動脈血流異、第3児は正常であった。治療直前には供血児は徐脈であり、胎児鏡挿入時には心拍消失、暗赤色であった。他2児は蒼白色であり徐脈を呈し、1児死亡に伴うFeto-fetal hemorrhageと考えられた。受血児と供血児間は受血児から供血児へのAV吻合のみであった。受血児と第3児間の処理は視野がとれず、第3児の腔より2本目のトロッカーを挿入して凝固した。受血児の心拍は正常化した。第3児と供血児間の吻合の処理中に第3児は死亡した。妊娠31週に帝王切開術を施行し生児を得たが、児はPVLが疑われている。[考察](1)手術手技は困難であったが、手術は完遂された。(2)吻合血管の評価より病態には3児が関与していたと思われる。(3)急激なFeto-fetal hemorrhageの結果予後不良となったと推察される。 |
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妊娠中期に発症した双胎間輸血症候群の一例〜前壁付着胎盤に対するレーザー胎盤血管凝固術〜 | ||||
服部純尚、田中 守、松本 直、峰岸一宏、石本人士、吉村泰典 慶應義塾大学 症例は33歳、2経妊1経産。前医にてM-D twinフォローアップ中に、妊娠17週よりTOPS stage IIとなり当院へ紹介された。羊水除去術を施行したが効果なく、レーザー胎盤血管凝固術を施行する方針とした。胎盤は子宮底部から前壁を完全に覆っていた。MRI検査にて穿刺可能部位を詳細に検討した所、膀胱直上のみが穿刺可能部位であることが判明した。そこで、彎曲型シースとsemi-rigid type 胎児鏡 (直径2mm、0。、STORZ社)およびトロッカーとしてカテーテルイントロデューサー 12Fr(メディキット社)を用い、下腹部正中縦切開の後、子宮筋層に直接トロッカーを挿入し、YAG Laserにて吻合血管を選択的に7本凝固した。術後一時的にdonor児が胎児水腫を発症したものの、TOPSは改善し、現在妊娠経過は順調である。 前壁付着胎盤のレーザー凝固術において、MRIによる穿刺部位の探索、彎曲型の胎児鏡、カテーテルイントロデューサーの使用は有用であると考えられた。 |
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Single IUFD後のfeto-fetal hemorrhageにより異なる転帰をとった一絨毛膜性双胎の2例 | ||||
住江正大、中田雅彦、日下恵美子、三輪一知郎、佐世正勝、杉野法広 山口大学 一絨毛膜性双胎における一児胎児死亡は、胎盤の血管吻合を介する生存児から死児への急激な血液移行による失血(feto-fetal hemorrhage)が起こることが報告されている。妊娠20週で一児死亡を来し、feto-fetal hemorrhageによると思われる生存児の重症貧血を認め、胎児輸血を試みたが、臍帯血管の虚脱の有無にて異なる転帰をとった2症例を経験した。症例1は供血児の臍帯動脈拡張期途絶を認め、妊娠20週時に供血児がIUFDとなった。臍帯血管の虚脱は認めず、一児死亡から16時間後に胎児採血・輸血を施行した。妊娠35週で分娩となり、生後8カ月の現在まで神経学的異常所見を認めていない。症例2は70%の発育差と供血児の臍帯動脈拡張期途絶を認め、妊娠20週に供血児がIUFDとなった。一児死亡から7時間後に生児の胎児採血を施行し、貧血を認めたが、臍帯血管の虚脱のため、輸血のための臍帯穿刺が不能で、一児死亡から9時間後に他児もIUFDへ至った。 |
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胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術が困難と考えられたTTTSの1例 | ||||
新家 秀、林 聡、左合治彦、川上香織、大石芳久、久保隆彦、北川道弘、名取道也 国立成育医療センター 今回我々は、TTTS Stage IIIであるが、胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)の適応外と判断し、羊水吸引術で管理した1例を経験したので報告する。 症例は、33歳、1経妊0経産、妊娠20週2日、当院へ紹介となる。超音波検査にて、臍帯動脈血流異常を認めTTTS Stage IIIと診断した。両児の臍帯付着部はほぼ中央で付着間は1cm未満、間にA-A Shuntを認めたことよりFLP不能と考え、羊水吸引術のみを施行し管理した。 羊水吸引術後軽快し、胎児発育は良好であったが、供血児の臍帯動脈血流異常は持続した。 妊娠29週4日、供血児の遷延性一過性除脈を認めたため、帝王切開術を施行し生児を得た。分娩後の胎盤でも、臍帯間にA-A Shuntを認めた。 TTTSにおける、胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術は有効であるが、臍帯付着部や吻合血管などを充分に考慮して行うことが重要と考えられた。 |
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当科における双胎間輸血症候群(TTTS) Stage I症例の転帰 | ||||
加地 剛、前田和寿、須藤真攻、森根幹生、苛原 稔 徳島大学 (目的)TTTS stage Iの症例に対して胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術を行うか羊水除去を行うかは未だ一定の見解はない。そこで、診断時のstageが Iであった症例に着目しその転帰について検討した。 (方法)1999年〜2004年に経験したTTTSのうち診断時のstageが I の11例を対象とし後方視的に検討した。治療は羊水除去を行った。 (成績)平均診断週数は21.7週(16-32週)、羊水除去は8例(72.7%)に行われ平均3.6回(1-8回)であった。経過中、羊水差が消失したものが1例(9.1%)、stage Iのままが5例(45.5%)、stageが進行したものが5例(45.5%)、うちstage IIに進行したものが1例(9.1%)、IIIが3例(27.3%)、IVが1例(9.1%)であった。予後は20週未満発症の7例において5例(71.4%)が人工妊娠中絶、1例(14.3%)が受血児の新生児死亡、1例(14.3%)が2児ともに予後良好であった。一方24週以降の発症例4例では1例(25%)は受血児が新生児死亡となっていたが3例(75%)は2児ともに予後良好であった。 (考察)羊水除去ではTTTS stage Iの約半数はstageが進行し、20週未満の早期発症例では予後は不良であったことから、20週未満発症例ではStage Iにおいてもレーザー凝固術を考慮すべきと考えられた。 |
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11月27日(土)13:45〜14:15 | ||||
口演4 双胎 治療・評価 | ||||
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Histoacryl blueRを用いたTRAP sequenceに対する胎児治療 | ||||
天野 完 北里大学医学部 妊娠14週、双胎1児無心体のため紹介受診となった。経過観察としたが、健児を凌駕するほどの無心体の増大、羊水過多を認めたため、23週6日、超音波ガイド下に無心体内の3箇所の血流を液状組織接着剤であるHistoacryl blueRにより遮断した。その後無心体の増大はみられず次第に縮小した。羊水過多のため頻回の羊水除去、子宮収縮抑制が必要になったが、胎児はwell-beingの状態が持続した。34週3日突然羊水量の減少を認めたため、翌日持続硬膜外麻酔下に分娩誘発とした。児は2042g、♀、Ap.S.7/8、Ua-pH7.18で、心筋肥大を認めたがとくに問題なく経過し、生後17日で退院となった。 |
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HIFUによるTRAP sequenceの治療に向けての基礎的研究 | ||||
市塚清健1、市塚清健1、市原三義1、内山心美1、石川哲也1、安藤 智1、松岡 隆1、佐々木一昭2、梅村晋一郎2、関沢明彦1、岡井 崇1 昭和大学1、日立中央研究所2 [目的]近年、高出力収束超音波(High-intensity focused ultrasound以下HIFU)照射を用いた深部腫瘍に対する非観血的な治療が行われている。我々はHIFU照射がTRAP sequenceの治療に応用可能か検討した。 [方法]JW系妊娠25日家兎母獣の腹部上に脱気水で満たされた容器を置き、HIFUトランスデューサーに診断用プローブを一体化させたdeviceを脱気水中に入れ、HIFUを超音波ガイド下で皮膚上から胎内臍動脈に照射し、血管閉塞可能な出力を検討した。また、母獣、HIFU非照射他胎仔の皮膚および心拍数への影響を確認した。 [結果] 2750 W/cm2 のHIFU照射で血流遮断が可能であった。母獣皮膚に軽度熱傷が認められた。心拍数の変化はともに認められなかった。 [結論] TRAP sequenceの胎児治療は低侵襲な治療法へと変遷してきたが、いずれの治療法も子宮内に機器を挿入する必要があり、破水、感染に伴う早産の併発が問題となる。また胎盤位置により治療が制限される場合もある。HIFU治療はより低侵襲であり、合併症の可能性が低く、胎盤位置に左右されない治療で、TRAP sequenceに適した治療法であると考えられた。 |
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無心体双胎に対して施行したラジオ波臍帯血流遮断術(RFA)の5例 | ||||
川上香織、林 聡、大石久芳、新家 秀、左合治彦、久保隆彦、北川道弘、千葉敏雄、名取道也 国立成育医療センター 無心体双胎では正常胎児から無心体児の臍帯動脈への逆流性還流により正常胎児に心不全を生じ、高率に子宮内胎児死亡や新生児死亡をおこすことが知られている。 我々はこれまでに無心体双胎を10例経験し、5例に対してRadiofrequent ablation(RFA)を用いた胎児治療を行い有効な成績が得られたので報告する。RFA施行5例中3例は正期産で健常児を分娩した。1例は妊娠26週に前期破水で分娩となり、生後しばらく経過良好であったが生後39日目で敗血症のため死亡した。1例は現在妊娠27週で妊娠継続中で経過良好である。RFAの適応外となった5症例中3例は無心体に血流を認めず経過観察となり、そのうち2例は正期産、1例は現在妊娠継続中である。その他2例は妊娠16週未満の症例で無心体/正常児の体重比が80%以上と高値で2例とも健常児のIUFDとなった。無心体に対するRFAは低侵襲で有効な治療法と思われた。 |
11月27日(土)14:30〜15:20 | ||||
口演5 胎児評価 | ||||
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3D超音波にて経過観察した胎児仙尾部奇形腫の1例 | ||||
津崎恒明井庭貴浩、井庭裕美子 公立八鹿病院 24歳の1回経産婦において、妊娠23週の定期検診時に胎児腰部の充実性腫瘤を認め、3D超音波にて経過観察を行った。腫瘤は妊娠19週の定期検診時には認められなかったことから、胎児の発育途上に生じたものと考えられた。腫瘤は胎児仙骨部から発生し、カラードップラ血流計測にて、その表面にから基部にかけて豊富な血流の存在が推定された。妊娠27週頃から臍帯動脈のresistance index(RI)の上昇並びに下大静脈の怒張と共に胎児水腫を呈したため、妊娠28週5日に兵庫県立こども病院へ母体搬送した。この時点で胎児下大静脈におけるpreload index(PLI)は0.25であった。妊娠29週0日に帝王切開術にて娩出し、気管内挿管および臍帯静脈canulationのもとに、腫瘤摘出が試みられたが、骨盤内後腹膜静脈叢からの出血が止血困難となり、失血性ショックにて死亡した。本症例の胎児治療についてdiscussionしたい。(本症例の管理にご尽力頂きました兵庫県立こども病院外科の佐藤志以樹先生ならびに荒井洋志先生に深謝いたします。) |
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胸水/胸腔断面積比を用いた原発性胎児胸水に対する定量的評価の試み | ||||
佐世正勝、三輪一知郎、日下恵美子、住江正大、中田雅彦 山口大学 原発性胎児胸水は、超音波断層装置にて胸腔内のecho free space として描出される。15、000 妊娠に1例と比較的稀な疾患であるが、胎児水腫や肺低形成の原因となる危険性があり、その管理には注意を要する。今回、胸水/胸腔断面積比(以下、PE/TAR)を用いて胸水を定量的に評価し、予後との比較を行った。当科で妊娠分娩管理を行った原発性胎児胸水7例を対象とした。このうち5例に胎児水腫が発症した。胎児水腫を認めた5例のPE/TARは、いずれも0.4以上であった。6例に胎児治療(胸水除去:5例、シャント設置:1例)を行った。シャント設置した例において、胸水の消失と共に胎児水腫は改善した。出生後、3例(PE/TAR≧0.4は3例)に人工呼吸管理、4例に胸腔ドレナージ(PE/TAR≧0.4は3例)を必要とした。今後、症例を増やして有用性の検討を行っていきたい。 |
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胎児消化管異常の出生前診断において胎児3D-MRIが有用であった2症例 | ||||
佐々木禎仁、日高康弘、吉田俊明、田熊直之、千石一雄 旭川医科大学 胎児消化管異常の出生前診断の主流は超音波検査であり、消化管狭窄、捻転、穿孔、腹膜炎などの異常所見を早期に正確に診断することで新生児予後を大きく改善しうる。最近では超音波検査のみでは胎児消化管異常の正確な出生前診断は困難であり、胎児MRIの併用により胎児消化管領域の正確な診断が可能とする報告が出されている。今回我々は通常のT1、T2強調、HASTE画像の他に、成人の肝胆膵領域で利用されているMRCPの手法を胎児腸管に応用し、3D-MRI画像を作成することを試みた。脂肪抑制3D-FLASHよりMIP法により投影画像を作成するものである。症例は妊娠後期の胎児腹壁破裂、十二指腸閉鎖の2症例であり、両疾患とも下部消化管領域の異常所見の有無が出生後の予後を左右しうる疾患である。今回我々は3D-MRIの画像を作成することで、特に胎児下部消化管領域の鮮明な立体画像から、部分的かつ全体的に腸管の状態を把握し、より正確な出生前診断が可能であった。今後また様々な消化管疾患、腫瘍疾患の出生前診断への応用が可能であろう。 |
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胎内死亡した腹壁破裂の1例 | ||||
原 章彦、芦塚修一、桑島成央、吉澤穣治、大浦訓章、山崎洋次 東京慈恵会医科大学 症例は、在胎32週1日の胎児エコーでmultiple bubble signが出現し、33週1日には腸閉鎖、腹壁破裂が疑われたため当院へ紹介された胎児である。来院時のエコー、MRIで腹腔内の腸管の拡張および壁の肥厚が見られた。また腹壁外に腸管構造の欠如した腫瘤が脱出していた。胎児の肺は未熟であること、腹壁外の腸管は切除を免れないこと、母体や胎児の状態は落ち着いていることより、肺の成熟を待って帝王切開することとした。しかし、34週1日のエコーにて胎児の心拍動はなく、胎内死亡が確認された。 腹壁破裂は合併奇形も少なく予後のよい疾患とされている。しかし胎児診断の進歩により、胎内死亡している症例も確認されている。本症例のような、胎児エコーで腸管壁の肥厚が認められる腹壁破裂症例は予後が不良であることも明らかになっている。今後は、このような症例に対する治療方針の確立(娩出のタイミング)や、胎内治療の可能性について検討する必要がある。 |
満期産緊急帝王切開術における出生前胎児保護としてのtocolysis |
高田 香曽我朋宏、小久保荘太郎 聖隷浜松病院 満期産緊急帝王切開術での胎児は低酸素に曝されていることが多い。出生前の胎児をいかに早く低酸素状態から救えるかが胎児の予後に大きく影響することは言うまでもない。そこで胎児保護のために麻酔科医に与えられる課題は、より速い麻酔導入による安全な胎児娩出と緊急子宮筋弛緩(tocolysis)による子宮内環境の改善である。 当院では緊急子宮筋弛緩として母体に対する(1)高濃度セボフルレン(3〜5%)吸入(2)ニトログリセリン(100〜200μg)静注のいずれかまたは併用を行っている。その子宮筋弛緩作用は経験上も明らかだが、今回1999年4月〜2003年3月の満期産帝王切開1058例のうち麻酔科医が緊急子宮弛緩を行った36症例と行わなかった対照群1022症例について出生児のアプガ-スコア、臍帯血血液ガス分析等について検討し、緊急子宮弛緩法としての効果とその適応について考察する。 |
11月27日(土)15:20〜16:00 | ||||
口演6 胎児尿路・胎児治療技術 | ||||
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胎児は痛みを感じるか? | ||||
室月 淳、岩根恵子、小山理恵、福島明宗、井筒俊彦、杉山 徹 岩手医科大 「胎児は痛みを感じるか」については種々の議論がなされている。 一般に、胎児は「痛み」を感じないということが暗黙の前提で胎児治療がなされている傾向があるが、その一方で同じ修正在胎週数の早産児に対しては、充分な鎮痛がなされなければならないと近年勧告されている。本研究では過去に行われたヒツジ胎仔手術のデータを見直し、胎仔にとって「痛み」という創傷ストレスについて検討することを目的とした。新生児領域では「痛み」を客観的に評価する指標がいくつか提案されており、その中でヒツジ胎仔に適用可能なデータ、すなわち血圧、心拍数、動脈血酸素飽和度、血中カテコラミン、コルチゾール、ACTH値の術後の変動を検討した。その結果、新生児では「痛みを感じる」ときに変動するといわれるこれらの値が、ヒツジ胎仔手術後の1〜2日にわたって有意に変化していることが明らかになった。ヒツジ胎仔が本当に「痛みを感じる」かの議論は別としても、これらの結果は胎仔が著明なストレスを受け、それに反応していることは明らかである。胎児の受ける「痛み」に対し、その鎮痛に顧慮を払う必要があると考える。 |
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出生前に推定診断したMMIHS(Megacystis Microcolon Intestinal Hypoperistalsis Syndrome)の2症例 | ||||
日高庸博、遠藤紫穂、山中薫、川俣和弥、石原由紀、根木玲子、千葉喜英 国立循環器病センター MMIHSは巨大膀胱とmicrocolon、腸蠕動の低下を主徴とする女児に多いHirschsprung病類縁の稀少な疾患で出生前診断の報告は少ない。当科で経験した、出生前にMMIHSを強く疑い出生後に確定診断された症例2例を報告する。子宮内での特徴的な超音波所見は巨大膀胱、両側の水腎水尿管症、腸管の拡張像と正常な羊水量であった。そのうち巨大膀胱は妊娠20週前後で発見され、腸管の拡張は30週以降になって確認された。1例では膀胱羊水腔シャント術を行ない、もう1例では行わなかった。両症例とも胎児採尿による評価で腎機能の悪化は認められなかった。女児で上記のような超音波像を認めた場合には本疾患を疑う必要がある。本疾患では両側の水腎症にも関わらず子宮内で腎機能の悪化が見られないのが特徴であり、膀胱羊水腔シャントの適否に関してはさらなる議論が必要である。 |
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羊水過多を呈した胎児巨大水腎水尿管の1例 | ||||
松本富美永原 啓、東田 章、島田憲次 大阪府立母子保健総合医療センター 症例は、在胎34週4日出生の女児。母胎は34歳、1回経妊1回経産で、特記すべき既往歴なし。21週時に胎児腹腔内嚢胞を指摘され、後に左水腎水尿管と判明。また、27週より羊水過多がみられるようになり、34週2日前医にて1000mlの羊水吸引が行われたが、直後のAFI=26.33週頃より水腎の悪化による胎児腹囲の急激な増大および対側の上部尿路拡張がみられるようになり、帝王切開にて早期娩出となった。出生体重は2912g。Apgar score 2/7。生後すぐに気管内挿管による呼吸管理および左経皮的腎瘻造設術が行われ、400mlの尿が回収された。以後呼吸状態は安定し、翌日抜管。対側の尿路拡張は自然消失。消化管閉鎖なく、哺乳および排泄正常。染色体異常なし。生後27日内視鏡検査にて両側膀胱頸部への異所開口尿管を確認後、左尿管形成術ならびに尿管膀胱新吻合術が行われ、以後経過良好である。 |
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25ゲージPUBS針の開発と安全性の評価 | ||||
川上裕一、松田秀雄、坂口健一郎、芝崎智子、高橋宏典、古谷健一、菊池義公 防衛医科大学校 【目的】PUBS用25Gの穿刺針を開発し、その有効性および安全性を評価した。【方法】1:生理食塩水を充満して閉鎖した臍帯静脈を22、23、25G針で穿刺・抜去し内圧を経時的に測定。2:成人血液を、22、23、25G針内を通過させ、通過前後のデータを比較。3:23G針を使用した19例と25G針を使用した16例の胎児採血直後に施行したNSTで、variability、accelerationが再現するまでの時間を後方視的に比較検討。【成績】1.22、23、25G針では、 10.3±1.0mmHg、14.5±1.2mmHg、25.0±2.2mmHgで平衡に達した。2.22、23、25G間で有意差は認めなかった。3.variability、accelerationが再現するまでの時間は、それぞれ20.5±3.34分vs。 4.00±1.47分、44.6±5.54分vs。16.3±3.25分であった。【結論】25G針を用いた胎児採血は、穿刺による臍帯静脈内の圧変化が少なくかつ抜去後も血圧が高く保たれ、胎児への影響が少ない。より安全なPUBSへの期待がかかる。 |
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