会長挨拶



日本胎児治療学会会長 

馬 場 一 憲

埼玉医科大学総合医療センター
総合周産期母子医療センター
母体・胎児部門 教授
   

 

 超音波診断装置の出現とその急速な進歩によって、出生前に胎児の疾患や状態を相当なレベルまで詳細に把握・診断できるようになりました。3次元超音波を用いれば、出生後の新生児を見るとの同じように胎児を見ることができ、胎児は正に人間であると実感させられます。

 しかし、患者として胎児をとらえた場合、診断だけでなく、それに基づく治療が行われなければなりません。疾患の多くは出生後の治療で対応可能ですが、胎児治療を行わなければ生きて生まれることができない、あるいは出生しても予後不良な疾患や重篤な障害が残ってしまう疾患も少なくありません。

 The Fetus as a Patient国際大会が松江で開催された1987年から、すでに四半世紀になろうとしています。また、1993年に富士吉田で開催されたThe Fetus as a Patient国際大会で採択されたThe Fetus as a Patient '93宣言

 ・将来の人類となるべき胎児は、医療の対象、患者として扱われ
  るべきである。
 ・医師、医療に携わる人々、及び社会は、患者である胎児に対し
  て、適正な診断と治療を提供する真摯な義務を有する。

から17年が経ち、本学会の前身である胎児治療研究会が立ち上がってからも7年が経過しました。しかし、この間、対象疾患を持つ胎児のどれほどが胎児治療の恩恵に与ることができたでしょうか。

 この度、第8回日本胎児治療学会学術集会を開催させていただく機会を与えられましたが、本学術集会が、参加者にとって有意義な会となり、何より、適切な胎児治療の機会と恩恵がより多くの胎児に届けられることになりますよう、学会員および胎児治療にご興味のある方々の積極的なご参加とご協力をお願いいたします。

 今回は、
うまくいった胎児治療」だけでなく、昨年同様、
うまくいかなかった胎児治療」のご発表も歓迎いたします。
さらに、
胎児治療中・治療後のトラブルを乗り切った症例
胎児治療した児の中・長期予後」、将来の進歩のための
胎児治療の革新技術」についてのご発表を期待いたします。
また、今年、アジアで初めての国際胎児医学・外科学会(
International Fetal Medicine and Surgery Society)大会が、9月にわが国で開催されることもあり、世界にも目を向けたいと考えております。

 会場となる川越は、東京の池袋駅から急行電車でわずか30分の距離にあり、NHKの朝の連続テレビ小説「つばさ」の舞台となった「小江戸」と呼ばれる蔵造りが残る観光地です。学術集会後には街中を散策されることをお勧めいたします。

 学術集会は、学会員以外でも参加可能です。胎児治療にご興味ある皆様方のご参加をお待ち申し上げます。