研究会紹介

 

日本胎児治療研究会について

わが国は、超音波診断を中心とした出生前診断の技術、普及率、新生児医療のレベル、いずれも世界に誇れるものがあり、周産期死亡率に見る周産期医療は世界のトップクラスにある。

しかし、出生前の胎児に対する治療(胎児治療)に関しては、社会的、経済的に認知されているとは言い難く、治療の対象となるべき病気を持つ多くの胎児が適切な治療を受けることなく、亡くなったり、後遺症を残したりしているのがわが国の現状である。

 

胎児も患者として医療の対象とすべきとの認識から、The Fetus as a Patient という国際学会が作られ、わが国においても、1987年に松江で、1993年に富士吉田で、2回のThe Fetus as a Patient 国際学会が開催されている。特に、1993年のThe Fetus as a Patient 国際学会では、胎児は患者として扱われるべきであるという明確な宣言が採択されている。

The Fetus as a Patient '93宣言

将来の人類となるべき胎児は、医療の
対象、患者として扱われるべきである。

医師、医療に携わる人々、及び社会は、患者である胎児に対して、適正な診断と治療を提供する真摯な義務を有する。


欧米では、胎児の様々な病気に対する治療法が開発され、臨床応用されている。どの治療法が最も適切かという比較研究も多くの病院が参加して大規模に行われている。

しかし、10年前、わが国において開催された学会で採択された「The Fetus as a Patient ’93宣言」にも関わらず、わが国では、胎児治療は遅々として進まず、ごく限られた病院で、散発的に、各病院が多くの経済的負担をする形で、行われているのみである。

このような現状の中、2004年4月、The Fetus as a Patient 国際学会が、再びわが国で開催されることになり、これを機に、わが国における胎児治療を飛躍的に発展させるために、この日本胎児治療研究会設立の機運が高まった。

The Fetus as a Patient 2004 国際学会の大会長である中野仁雄九州大学教授、千葉喜英国立循環器病センター部長が中心となり、日本産婦人科ME学会、胎児心臓病研究会のメンバーなど胎児治療に関連する様々な人たちに呼びかけて、2003年11月15日に第1回日本胎児治療研究会が九州大学構内で開催された。

この第1回研究会は期待以上の成功を収め、胎児治療の開発、共同研究のみならず、胎児治療に対する社会的認知の向上、ひいては、「The Fetus as a Patient ’93宣言」の実践に向けての活動を続けるため、幹事会が組織され、研究会として正式に発足した。

 

The Fetus as a Patient 2004

 

国際胎児病学会 2004

2004年4月23日〜26日、福岡で、第20回国際胎児病学会が開催された。世界各国から、500名以上の胎児医学に関係する医療関係者や研究者が参加し、活発な意見交換が行われた。

学会最終日、学会として、下記の宣言が宣言された。

The Fetus as a Patient 2004 福岡宣言

 

医師 、医療に携わる人々、および社会は、患者である胎児に対して、適正な診断と治療を提供する真摯な義務を有する。

 

胎児に対する新しい治療、管理方法の科学的検証、社会的認知の手続きは、小児、成人に対するそれと同等の扱いを受けなければならない。

 

胎児に対する診断、治療に際して、母親の人権と判断は充分に尊重されるべきである。